立山 (No.49)

今回の山行記録
憧れの剱岳+立山三山【2023年7月下旬】 / たかなさんの剱御前山・真砂岳(富山県)・別山(富山県)の活動データ | YAMAP / ヤマップ
深田久弥「日本百名山」をリスペクトして、登った百名山についてエッセイを書こうと思います。No.は百名山に準拠しています。
今回は剱岳の内容の続きです。
最終日も晴れ。どこまでも続くような稜線を見て、冒険心が掻き立てられた。もともとは行きと同じ道を通ってまっすぐ室堂へ帰るつもりだったのだが、行きに見た立山三山の景色を思い出し湧き上がるエネルギーに身を任せ、ルートを変更して立山三山を周って室堂へ帰ることを決意した。立山はすり鉢のようになっており、雷鳥沢はその底にあたる。今回はすり鉢のフチを通って室堂へ降りることになる。
まずはすり鉢の外側にあたる剱澤を出て、すり鉢のフチのひとつである別山へ。ここは晴れていれば剱岳を正面に望む、絶好の撮影スポットだ。別山から見ると剱岳の頂は遥か遠くに感じられ、昨日あの険しい頂に立っていたことがまるで遠い昔の出来事のように感じられる。

別山以降は雷鳥沢を右手に見下ろしながら、続く稜線を歩く。足元を高山植物が彩り、時折吹く強い風が、自分が天上の道を歩いていることを教えてくれるようだった。剱岳のような岩場はないものの、両側を見下ろすと、足がすくむような高度感に襲われる。
一番最後に通る雄山には雄山神社がある。ここには古くから立山参りの参拝者が全国から集まったそうである。その理由として深田久弥は『日本百名山』の中で立山が変化に富み楽しみが多いことを挙げているが、地図も写真もない時代、そびえ立つ山々と、まるで神々が憩う広場のような眼下の景観は、まさに畏敬の念を抱かせる神聖な場所だっただろう。

雄山神社からはぐんと下る。神の領域からだんだんと人の領域へ戻っていく。雄山神社で家まで無事に着くことを祈願し、ゆっくりと下山していく。神聖な領域から、徐々に人々の生活圏へと戻っていく感覚。室堂に近づくにつれ、人も増えてくる。
室堂では私の登山道具を不思議に思ったのか、どこまで行ったか尋ねられた。剱岳、と答え山頂を指さそうとしたが、別山では見えていたその岩峰は人々の賑いの向こうに霞んでしまったのか、そのときにはもう見えなくなっていた。